2018.02.23

ごはん同盟のごはんとうまみの話 vol.8 海苔の話 「しっとり海苔の秘密」~太巻きずし~

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稲作が日本に伝わって三千年。お米は日本人の主食として長い間食べられてきました。そして、ごはんを引き立てるために生まれた素材の持ち味を活かしたおかずや汁物。このコラムでは、ごはんと一緒にいただきたい「うまみ」ある一品をご紹介します。
先日、佐賀県に行ってきました。羽田空港から飛行機に乗ってちょうど1時間30分。佐賀空港に着陸する直前に窓から見えたのは規則的に並ぶ無数の海苔網。多くの河川からの豊富な栄養分が流れ込む有明海は、海苔の養殖に適した海なのだそうです。
日本一とも言われる有明海の干満差は最大でおよそ6メートル。海苔を育てる海苔網は、干潟に支柱を立て浮かせるように設置します。満潮時には海苔は水の中に潜り海水の栄養分やミネラルを吸収し、干潮時には太陽の光をたっぷりと浴びて光合成を行います。この潮の満ち引きの繰り返しで、くちどけの柔らかい海苔ができあがります。

「有明海は海苔の畑だから」

これはお話を伺った海苔加工会社の社長さんの言葉。干潟に支柱を立て、気温や天候、干満の差など海の環境変化に気を配り、細やかな手入れを行いながら海苔を育てる。海苔は自然に育つものではなく、昼夜問わず手をかけて育てる人がいてこそ、できあがるものでした。

海苔のおいしさを決める上で、最も大切なのは収穫時期です。海苔はシーズンごとに種付けされた同じ網から何度も収穫され、その網で最初に収穫されたものが最もおいしい海苔となります。いわゆる、初摘み海苔(一番摘み)ですね。初摘みを行った後、海苔芽がまた伸びて再び摘採されたものを二番摘みといい、順次、三番摘み、四番摘みと続きます。摘採回数が度重なると海苔芽が老化し、その網からの海苔生産が終了となります。
代表的なうまみの成分といえば、かつおぶしに多く含まれるイノシン酸、昆布に多く含まれるグルタニン酸、干ししいたけに多く含まれるグアニル酸が有名です。

それでは海苔に含まれるうまみの正体は何でしょうか?

実は、海苔には、イノシン酸、グルタミン酸、グアニル酸の3つのうまみの成分が含まれています。うまみ成分は、それぞれひとつひとつでもおいしいのですが、これらがいくつか合わさることで、さらにうまみがアップすることはご存知の通り。紙のように薄い少量の海苔でもうまみたっぷりに感じられるのは、このうまみの相乗効果によるものです。

さらに、乾海苔や焼海苔の状態ではイノシン酸はほとんど存在せず、水分に触れたときに酵素が働いてイノシン酸が生成することが最新の研究結果で明らかになっています。

海苔は水分に触れた時にさらにうまくなる。つまり、ごはんとの相性が抜群だということです。海苔で包んでしっとりとしたおむすびがおいしいのは、ちゃんと理由があったのでした。
海苔の上に酢飯を広げ、好みの具材を芯にして巻く太巻きずしも、海苔のおいしさを実感できる料理です。

具材の色と味のバランスが考えられた太巻きずしは、切り口も華やかでおいしいですよね。具材に注目が集まりがちですが、おいしい太巻きずしをつくるには、実は海苔も大事。初摘みのやわらかい海苔を使うと、ごはんの水分をしっとりと吸った海苔が歯に当たった瞬間に抵抗なく噛み切れ、口の中でとろりと溶けていきます。

「太巻きずし」材料とつくり方


◎材料(1本分)
海苔 1/2枚(半分切)
ごはん 100g(炊きたてのもの)
すし酢 小さじ2
かんぴょう甘煮 適量
しいたけ甘煮 適量
卵焼き 適量
きゅうり 適量
さくらでんぶ 適量

◎つくり方
1.炊きたてのごはんにすし酢をまわしかけ、混ぜ合わせる。
2.海苔の裏面が上になるように置き、左右と手前を1㎝、奥側を2㎝空けて、1の酢めしを広げる。
3.きゅうり、卵焼き、かんぴょう甘煮、しいたけ甘煮、さくらでんぶをのせ、手前から巻き上げる。
4.形を整え、海苔のつなぎ目部分を下にして乾いた布巾をかぶせ、30分ほどおく。
5.包丁を手酢でぬらした布巾でふき、3~4つに切り分ける。
今回用意した具材は、かんぴょう甘煮、しいたけ甘煮、卵焼き、きゅうり、さくらでんぶの5種類。太巻きずし定番の具材です。
一般的に太巻きずしをつくるのに巻きすを使いますが、半分切の海苔を使うと巻きすがなくても巻くことができます。きゅうりや卵焼きのような芯となる具材を手前して、彩りを考えながらに並べます。
具材と酢飯を手で押さえながら、巻き始めます。酢飯はあまり盛りすぎずに。海苔の奥側2cm程度空けておくときれいに巻けます。
奥側の海苔を押さえながら酢飯の端まで巻きます。迷ってしまうと形が崩れやすいので一息に巻き上げましょう。
巻き上がったら形を整えます。海苔のつなぎ目部分を下にして乾いた布巾をかぶせ、30分ほどおきます。この時間にごはんの水分が海苔に伝わって、うまみが増すのです。
海苔がなじんだら切り分けます。今回は定番の具材を使いましたが、好みの具材ならなんでもOK。エビフライやソーセージなどを巻いてもおいしいですよ。

ちょうど海苔の収穫が最盛期を迎え、初摘みの海苔が売り場に出そろった時期。今が旬の海苔を太巻きずしで存分に味わってみてはいかがでしょう。
ごはん同盟 プロフィール

試作係(調理担当)のしらいのりこ、試食係(企画・執筆担当)のシライジュンイチ、夫婦ふたりによる炊飯系フードユニット。「おかわりは世界を救う」の理念のもと、日夜ごはんを美味しく味わう方法を生み出し、発信を続ける。お米やごはんに関するワークショップや料理教室を開催するほか、雑誌などを中心に様々なメディアにてごはんレシピを発表。著書『ごきげんな晩酌 家飲みが楽しくなる日本酒のおつまみ65』(山と渓谷社刊)が好評発売中。
http://gohandoumei.com
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